米の乳がん検診勧告変更について2009/11/20 12:45

はい、またまた久々の更新です!

すでに報道でご存知のかたも多いでしょうが、11月17日(現地時間で16日)
アメリカ政府の予防医学作業部会(USPSTF Preventive Services Task Force)から
乳がん検診の勧告変更が発表されました。
その主な内容は、次のとおりです。

  ・40代には定期的なマンモ検診受診を勧めない
  ・50~74歳には、2年に1度のマンモ検診受診を勧める
  ・75歳以上の検診は、健康状態を総合的に見て判断する
  ・自己触診(セルフチェック)は、推奨しない

アメリカでは新聞各紙、テレビ各局で取り上げられて大騒ぎになっています。
日本では朝日新聞ほかで、
「40代のマンモ検診の有効性を否定している」ことが重点的に報じられました。

実はこのかん、ずっとこの検診問題について勉強してきました。
米英で方針見直しの動きがあると報じられていたからです。

今回の変更について、わたしが何より重要だと思うのは
最新の科学的根拠に基づいてがん検診を考え
必要に応じて変更も辞さないという、その姿勢です。

今、治療の現場では、「EBM:科学的根拠に基づいた医療」ということが
さかんに言われます。
個人の見解や、根拠のないデータに基づいて治療を行うのではなく
その時点で分かっている最新の、信頼性の高いエビデンスに基づいて
治療を行おうという考えです。

同時に、そうした科学的根拠や、治療に伴うメリット、デメリットを
十分患者に説明し、納得してもらった上で
治療を行うということが重視されています。

それは裏返せば、医療は常に発展途上であり
最新の医学といえども分からないことや限界があることを認識した上で
最善の治療を行おうという姿勢でもあります。

検診についても、同じことが言えるはずです。
最新機器を使った検査であろうと、決して万全ではありません。
検診や、その検診で見つけようとするがんについて研究が進み
新しい事実が分かってくれば
方針の見直しが必要なはず。
また、その検診がどういう内容で、どのようなリスクがあるのかについて
受診者へのきちんとした説明が求められます。
今、健康な人を対象にしていても
検診の結果いかんでは、さらに精密検査を受けたり、
がんと診断されれば治療を受けたりと、
検診も、医療の一部だからです。


このブログで過去何度か
アメリカ最大の乳がん市民運動組織、
全米乳がん連合(NBCC:National Breast Cancer Coalition)について
触れてきました。
1991年に設立され、260万人の署名活動を通して政府に研究費増額を求めたほか
政策提議のできる人材の養成や、医療情報の提供など
幅広い活動を精力的に行ってきた団体です。
(過去記事:「全米乳がん連合-1」「全米乳がん連合-2」

そのNBCCから、今回の勧告変更を受けて、即日、eメールによる声明文が届きました。
設立以来、科学的根拠に依拠する重要性をとなえ
乳がん検診に限界とリスクがあることを長年訴えてきた団体として
作業部会の決定を支持するという内容です。
NBCCのホームページでも、今回の発表に対する見解が公表されています。
◆トップページ◆の動画にある“Breast Cancer Screening”から行けます)


これまで、医学の専門家でもないのに
医学的なことについては何も言えないと思ったりもしました。
でも今やインターネットであらゆる情報にアクセスでき
さらにNBCCをはじめ、「信頼できる情報の読み解き方」を学べる場は無数にあります。
今後は患者・体験者、一般市民も、最新の医学情報をきちんと読み解いて
自分の健康を守ると同時に
それぞれの立場から意見を伝えていくことが重要になるのではないでしょうか。

今後、わたしは次のことを目指して活動していきたいと考えています。

  ・科学的根拠に基づく、よりよいがん検診の徹底を
  ・受診者にメリットやデメリットを含め、がん検診に関する充分な情報提示を


ですが、「ストライプ・リボンの会」としては動きません。
この会は、ヌードとお金の問題を取り上げたのが発端ですが
それとはまた内容が全然違いますので。
別にサイトを設けることを今検討中です。実現の暁には、またご報告します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

そんなわけで、今後こちらのブログやHPはますます更新が滞ってしまうかと思います。
「お金」の件でいろいろ用意していたネタもあったのですが、
もうなんだか鮮度がすっかり落ちてしまいました(汗)。申し訳ありません。

なのでどうしても、ご報告しておかねばならないことだけ。

署名活動では、不特定多数の人から寄付を受けて活動資金にするのであれば
会計報告を誰でも見られる形で公表してほしい、と求めました。

その後についてですが、日本対がん協会は昨年から、
HPでほほえみ基金の単年度収支を報告してくれています。
◆こちら◆です。
実は繰越金の額について、計算が合わない部分があったのですが
問い合わせしたところ、単純な計算ミスで、近く修正しますとのお答えでした。

乳房健康研究会は、昨年末からHPで会計報告をPDFで公開してくれています。
◆こちら◆です。
法人設立時の分からすべて公開されています。
わたし、これに気づいたのがこの夏でした。
早くから公開してくださっていたのに、違う場所ばかりチェックしていて。
失礼いたしました!

以上が署名提出先の2件ですが、すでにご報告した通り、ほかにも
キャンサーネットジャパンも昨年から会計情報が公開されています。◆こちら◆

これで、署名開始時は
ラン・フォー・ザ・キュア(◆こちら◆)、1団体だったのが
4団体に増えました! わずかではありますが、4倍です(笑)。

他にもまだ公開している団体があるかもしれません。
気づいていなかったら、どなたかご指摘ください。
今後さらにもっと増えますように。

ラン・フォー・ザ・キュアについては、実はこの春、事務局におうかがいして
いろいろお話をうかがってきたんです。
マンモ機器の寄贈先の選定から、検診実施についてまで
非常に細かくルールをもうけて活動してらっしゃると分かりました。
そのあたりのご報告も結局できないままで、申し訳ないです。
また、この団体の画期的なのが、フリーマガジン「Pink」の発行です。
これには、乳がんに関連した医学情報のほかにも
さまざまな乳がん患者・体験者の生き方、活動が紹介されていて
みんな頑張ってるんだな~と勇気づけられます。
HPでも無料で見られます。◆こちら◆


以上、どーしてもご報告せねばと気になっていたことだけ
手短かな報告で申し訳ありません。

しばらくここは開店休業になるかと思いますが
また何かあったら更新しますので
今後ともよろしくお願いいたします。

寺田真由美

コメント

_ ともハハ ― 2009/11/20 19:42

こういう記事も見つけたのですが、どうなんでしょうね?
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009111900624
40代の乳がん検診方針変えず=作業部会勧告と距離−米厚生長官
 【ワシントン時事】セベリウス米厚生長官は18日、政府の予防医療作業部会が乳房エックス線撮影検査(マンモグラフィー)による乳がんの定期検診を「40代には勧めない」と発表したことについて、「女性にとって、マンモグラフィーによる検診は重要で、勧告は政府の方針ではない」との声明を出し、距離を置く考えを示した。
 外部の医師ら専門家で構成する作業部会は、誤判定や過剰検査によるリスク回避を理由にしていた。米がん協会や患者団体からは「早期発見の機会を失う」と反対する意見が噴出し、米メディアは、その是非を大きく取り上げている。

_ てらだ>ともハハさんへ ― 2009/11/20 21:25

ともハハさん、ごぶさたしています! 書き込みありがとうございます!
そうなんですよね。米がん協会は、今後も40代から受診するように勧めるとコメントしています。が、同協会は先月、10月20日、マンモ検診には過剰診断のリスクがあることを認め、ウェブサイトにリスクに関する説明を加えると発表しています。
(以下は「癌の情報tips」のページです。その発表を伝えた新聞記事を翻訳してくださっています)
http://blog.goo.ne.jp/cancerit_tips/e/ecf93cb25cd21c22931cc3a1f3b71cf3
マンモ検診に、有益性と同時にリスクがあることは認めているんですね。でも、40代からの検診をやめるほどのリスクではない、ということでしょう。
40代については本当に意見が分かれるようです。日本では、欧米より罹患のピークが低いと言われているので、なおさら問題になるでしょう。でも、データがないんですよね、多分。日本人の40代にとってマンモ検診がどれほど有効か、きちんとランダム化比較試験が行われたことはないと思います。

_ ぬこ ― 2009/11/22 19:06

ふーん、そうなんですか。どっちにしても受ける気のないやつがここにひとり。自己検診を勧めないとはどういうことなんでしょう。すみません、自分で調べもせずに。
いずれにしても、英米は日本の何十倍も科学について報道されているんじゃないか。今の仕事をしていてしみじみそれを思います。数が多ければ玉石混交になりやすいのかもしれないけど。ねえ。

ところでどうでもいいことその①。Randomized control studyは「無作為化対照試験」という言い方のほうがいささかポピュラーかも。っていうか、ほら、日本語が好きだから、わたし(笑)。

どうでもいいことその②。アメリカ、カナダ、オーストラリアでは、個々の科学記事がどの程度正確かを評価するサイトがあります。アメリカのは「ヘルスニュース・レビュー」→http://healthnewsreview.org/
冒頭に上の40代はマンモ云々の記事が評価されているようです。星4つ(最高は5つ)。これを見ると、評価した人はこの記事に大きな欠点がひとつある、と考えているようです。
カナダとオーストラリアは「メディアドクター」というサイト。カナダ→http://www.mediadoctor.ca/

イギリスについてはわが著者が同じサイトを作りたいと考えて準備を始めているようです。

でも、どういう資格の人がどういう手順で評価しているとかって聞かないでね。ほら、例によって単に見つけて丸投げするのがわたしだから(笑)。

新たな活動、応援しています!

_ てらだ>ぬこさんへ ― 2009/11/22 22:10

おお! またまたすばらしい情報紹介、ありがとうございます!
今日、キャンサーネットジャパンの乳がんに関するセミナーに行ってきたのですが、冒頭でちょうど、これに関連する話がありました。科学的根拠ということが言われ出して長いけれど、当初はそうした情報の「量の格差」がすさまじく、必死で海外の情報を紹介した。やがてインターネットが発達するにつれ、「質の格差」が問題になってきて、今求められているのは確かな情報の見分け方、分かりやすい伝え方だ、と。

このサイトは、Who we areのところを見ると、医療ジャーナリストがとりまとめ役で、ドクターの名前がずらずら書いてありますね。Informed Medical Decision Makingという財団の資金で運営しているそうです。こういう資金の調達の仕方、人材の確保というところも、日本は遅れてるんだろうなと、ちと悲しくなります。

教えてくださった記事は、今回の件を報じるAP電の記事を評価しているのですね。評価内容を見たところ、大きな欠点というのは、作業部会が「40代の検診をするな」と言っているかのように伝えて、それに続いて書き添えられている勧告について触れてない点とのことです。それは「定期的な2年に一度のマンモ検診を50歳になる前に始めるかどうかは、検診にともなう個々の利益や不利益について受診者がどう思うかを含め、その人の状態を考慮して、それぞれ決断するべきだ」という点。

ランダム化 → 無作為化 ね。ははは、またやってますね、わたし。そうですよね。なんか、このサイトを見に来る人は若めだろうなという意識が働いちゃうんですが、気をつけんとね。あと、やっぱり「対照試験」なの? わたしそっちかと思っていたら、このかん見ている資料は「比較試験」のほうが多いような気がしたり。それともそれはまた別のものを指しているんでしょうか。

あと、自己触診についてはですね、いくらきちんとやり方を教えても、偽陽性(ほんとはがんじゃないのに、がんかもと疑われること)が高くなるだけで、死亡率低下につながらないというコクラン・レビューが出ているんです(下記はそれを翻訳した概要が出ているMindsのサイトです)。
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0006/4/0006_G0000100_T0002897.html

これは、何も「自分の胸にさわってみるのは無意味だ」ということではないとわたしは思ってます。事実、今も8割だったかは自分で見つけているわけだし。ただ、資金を投じて、大々的に自己触診を広めるだけの「有効性(=死亡率を下げるという確証)」はないとの指摘だと受け止めるべきかと。

_ ぬこ ― 2009/11/22 22:39

いや、わたしは例によって自分が困らない程度に付け焼刃で調べているだけだから、実際の資料にそういうのが多いのなら、そうなんだと思います。無責任ですみません。でもわたしは無作為化対照試験でやってみています。間違いじゃないと思うので。一文字だけだけど、文字数も稼げるし(笑)。

_ てらだ ― 2009/11/22 23:40

確かにこういう試験で、比較対照のために作られたグループのことって「対照群」と呼ぶとどこかで学んだよな気がしてたんで、わたしも「対照試験」かなと思ったんですが。ま、今後も気にして見てみまっす。また懲りずに突っ込んでね(とアテにしているヤツ)。本、出るのマジで楽しみにしてます!

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_ 飯嶋洋治のフリーライターの現場から - 2009/12/24 22:44

生来のしつこい性格のためか? ピンクリボン問題(講談社『グラマラス』セミヌード騒動→ヤフーオフィシャル・ピンクリボンフェスティバルブログの閉鎖→黒幕としての朝日新聞社=日本対がん協会、およびそれを取り巻く企業の問題などなど)をウォッチしつづけてきて、すっ