勇気ある先輩患者たちの闘い2008/06/19 10:35

すでにお気づきの方も多いと思いますが、このかん呼びかけ人がドドドッと増えて
署名開始当初のおよそ3倍になりました。
みなさんの一言メッセージがまたすばらしい。
呼びかけ人はまだまだ募集中です!

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昨日は1993年にNBCCが260万人分の請願署名を
クリントン大統領に届けた話を取り上げました。

研究費増額をもとめてそれほど大規模な運動が展開されていたとは
わたしは今回はじめて知りました。
調べたかぎり、日本で似たような動きはなかったようですが
くわしいことはわかりません。

NBCCの設立には、さまざまな社会的・歴史的要因が背景にありました。
たとえば、ベビーブーム世代の人たちが乳がん患者の多い年代にさしかかり
患者の数がふえていたこと。
またその世代は60年代、70年代の社会運動がさかんだった時代を知っていて
どのように運動をおこすべきかの経験や知恵があったこと。

でも何より大きかったのは治療法に対する患者たちの「怒り」だったのではないか。
資料を読んでいてそう感じました。

乳がんというのは、「母性や女性のセクシュアリティと結びついて、
根強く女性のアイデンティティを示す身体の一部」(『乳がんの政治学』p.59)
にかかわる病気です。
「男性によってつくられた『胸を誇示する』アメリカの文化は、
乳房の喪失に直面した女性の感情的、心理的苦痛を増幅」(同p.59)させ、
患者たちがみずからの病気を秘密にしている時代がつづいていました。
しかも、以前は乳がんとわかると「ハルステッド法」といって
乳房のみならず脇の下のリンパ節、さらに胸の筋肉まで
ごっそり切除してしまう手術が標準とされていました。

そんななか、1974年にベティ・フォード大統領夫人や、
やはり政治家の妻であるハッピー・ロックフェラーが
乳がん患者であることを公表して手記を出版。
それによって勇気づけられた患者がどれだけいたことでしょう。

また、同じ1974年に乳がんの診断をうけた
ローズ・クシュナー(Rose Kushner)という女性は
すべての患者にハルステッド法を押しつけるのではなく
患者がみずから治療法を決定できるように情報と支援を提供するべきだと
国や医療関係者に根気強くうったえました。
同じころ、医者のあいだからもハルステッド法に疑問の声があがりはじめ
その後、部分切除でも生存面における差がないことが判明して
ハルステッド法はすたれていきます。

こうした流れが1991年のNBCC設立につながりました。
その頃にはいわゆる「温存手術」がひろがりはじめていたものの
あいかわらず患者も死亡者もふえる一方。
抗がん剤の治療も副作用をコントロールする手段がまだ不十分で
今よりはるかに辛かったようです。

何年たってもがんの基礎研究や治療法の研究
患者の生活の質向上が進まないことへの怒り。
それが、アメリカの対乳がん運動、ピンクリボン運動の
原点だったのかもしれないと思いました。

それからひとつ気になったことがあります。
NBCCが1992年に
「さらに3億ドル」の研究費増額をもとめるキャンペーンを展開したとき
「ピンクのリボン――乳がんへの意識が高い印――が
Tシャツやバッジに加えて付けられていた」(『乳がんの政治学』p.158)そうです。
しかしNBCCのホームページを見るかぎり
現在はピンクリボンを運動のシンボルとしてまったく使用していません。
なぜピンクリボンを使わなくなったのか……?
今回はそこまで調べきれませんでしたが、とても気になります。

次回からはいよいよ日本の乳がん関連団体について見ていきます。

参考資料:
・M.H.カサマユウ著、久塚純一監訳(2003年)『乳がんの政治学』早稲田大学出版部
「NBCC:全米乳がん連合」ホームページ
・高田一樹作成「乳がん・ピンクリボン関連年表」

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コメント

_ ぽん ― 2008/06/22 22:43

やはり乳ガン患者の多いアメリカ、その取り組みには一日の長がありますね。

先日も読売新聞の本田麻由美さんの記事で、こんなのを見つけました。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/gantowatashi/20070323ik02.htm

ご参考までに。

_ てらだ ― 2008/06/23 00:50

ぽんさん
興味深い記事の情報、ありがとうございました!
患者の声をがん医療政策や研究活動に生かす仕組み、研究や政策にかかわるための教育の仕組み、
なぜ今の日本にはないんでしょう。

_ ハンズ ― 2008/06/30 20:51

てらださん
ご無沙汰です!レス大変遅れ恐縮です。正に大変でしたね。でも早期で良かった。弊誌は、環境・CSR・社会貢献についての記事を掲載しております。私も癌で父を亡くしました。ピンクリボンについてはこれから勉強ですが、御指摘は当っていると思います。私に何が出来るか考えます。

_ てらだ ― 2008/07/01 00:57

ハンズさん、お久しぶりです! コメント、ありがとうございます。お父様、癌でいらしたんですね。この病気、ほんとに自分がなってみて初めて気付いたことが山のようにあります。
現在、マスコミ各社にもアプローチしはじめているところです。また何かアドバイスなどいただけたら幸いです。

_ ハンズ ― 2008/07/01 13:07

てらださん
実は私も結婚直後に、癌で胃を切除しております。宣告されただけで手術前に約8㌔痩せて、般若心経を読んだほどです。手術後は5~6㌔しか痩せませんでした!それ程デリケートな病気です。

_ てらだ ― 2008/07/01 14:05

ハンズさん、え!そうだったんですか。まったく分かっておらず、失礼いたしました。大変な思いをなさったんですね。でも今のような、大変ではあるでしょうが立派な仕事をなさるほど元気になられて、ほんとに何よりでした。
そういえば、わたしも治療開始前に1ヶ月ほど時間があり、そのかんリサーチしまくってただけなのに痩せました。抗がん剤の治療が始まったら、むくんで太って健康そうに見えたり。見た目じゃわからんもんです。

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